B・ピット主演『マネーボール』の監督が激白「ただの野球映画じゃないんだぜ!」

全米で公開されたばかりの野球映画『マネーボール』は、主演のブラッド・ピットの「野球とは無縁の人生だった」という発言で、映画ファンや野球ファンの話題を集めた。しかしこの映画に関わった人物で「野球に興味がなかった」のは、ブラッド・ピットだけではなかったようだ。なんと、監督のベネット・ミラーも「14歳のときから野球に一切興味がない」と発言している。


伝記映画の新たな金字塔と称された『カポーティ』で、2005年のアカデミー賞の候補にもなったベネット監督。そんな彼は、ニューヨークに生まれ育った生粋のニューヨーカーだが、90年代半ばに復活をとげた地元チームのニューヨーク・ヤンキースにも、特別な愛着はないのだという。「それではなぜ、一度は製作が中断した『マネーボール』を監督することになったのだろうか」という疑問に、ベネットは「主人公のキャラクターに強い興味を持ったから」と答えている。『マネーボール』の主人公は、ブラッド・ピットが演じたビリー・ビーンという実在の人物であり、彼こそがメジャーリーグの歴史を変えた張本人だ。

『マネーボール』は当初、スティーヴン・ソダーバーグが監督する予定だったのだが、ソダーバーグが降板し、ベネットに監督の座が回ってきたという経緯がある。そして監督が変わったことにより、大きな方向転換がなされたのだ。ソダーバーグはドキュメンタリー風のアプローチを予定していたのに対し、ベネットが用意したプランは、ビリー・ビーンという男についてのフィクション性のあるストーリーだった。このように、実在する人物についてのフィクション性を重視したストーリーを語る場合、実際に起きた事実とフィクションの部分のバランスを取ることに細心の注意が必要だとベネットは語る。

「いい映画になるようなストーリーにしたかった。だからビリーの本当の性格と実際の出来事を尊重した形でね。でも彼は、自分のことを見せ物にするような連中に心を開くタイプではないわけだよ。でもだからこそ、彼とは多くの時間を共有して、気心の知れた仲になったのさ。あとは原作にも描かれていた、ビリーの選手としての挫折についても描く必要があったね」

ビリー・ビーンは将来有望な選手として期待されてニューヨーク・メッツに入団したが、成績が振るわず、控え選手として球団を渡り歩き、最後にたどり着いたオークランド・アスレチックスで現役を引退し、球団スタッフに転身した。そこで彼は自分が感じた悔しさから、もっと違う形で選手を評価するシステムがあるのではないかと考え、それがのちに「セイバーメトリクス」と呼ばれる評価方法を生み出すきっかけとなった。辛酸をなめた選手時代を取り返すように、ビリーは球団を再生させることに闘志を燃やす。そんなビリーを演じたブラッドについて、監督のベネットはこんなコメントをしている。

「ブラッドにとっても、いつもとは違う役柄だったんじゃないかな。表向きのカリスマ的な人物像と、その裏側の用心深くも衝動的な心の奥底に野心を秘めたビリーの二面性を見事に表現してくれたと思う。わかりやすく『挫折したから成功したいんだ』って口にする役柄ではないからね」

あくまでも、野球をテーマにビリー・ビーンという人物を掘り下げた映画となっている『マネーボール』は、スポーツ映画というだけではなく、挫折と希望を描いた人間ドラマとなっている。そのため、単純なハッピーエンドは用意していないのだとベネットは締めくくる。

「もしもアスレチックスがワールド・シリーズまで勝ち上がって、優勝していたとしたら、僕はこの映画を作っていないね。アスレチックスが今でもワールド・シリーズに行けずにいること、つまりスター経営者といわれているビリー・ビーンにもまだ達成すべき目標があるってことが描きたかったんだ」

映画『マネーボール』予告編

『マネーボール』は2011年11月11日より日本でも公開される。

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